以前、仕事のために行った地方で
とある店を見つけました。
それは商店街の奥にある骨董品店。
僕自身そういうのが好きで、
思わずその店の方へ足が進みました。
近づくと昔ながらの木造で、
独特な匂いと雰囲気が
漂っていました。
店は開いてるっぽいので
入ってみると、
奥でメガネをかけたおじいさんが
座っていました。
「いらっしゃい」
優しい声で話しかけてくれました。
どーも。と頭を下げて店内を見回ると、
店の隅にひときわ目立つ
こがね色の壺がありました。
光の反射で輝いているように見えて
とても魅力的に思えました。
しばらく見惚れていると、
おじいさんが話しかけてきました。
「これ、いいだろう。」
「はい、凄く綺麗ですね」
「これは“時かけ壺”と言って名の通り時を超える力を秘めてるんだよ。」
てなことを言っていたので
そういうまじないの類かと思い
適当に聞き流していると、
おじいさんは
おもむろに壺を床に置き
「ほら、いくよ。」
と言い、
その瞬間に
ボンッ!と煙がたちました。
驚いて目を閉じてしまい
再びおじいさんの方を見ると
壺だけが床に転がっていて
そこにおじいさんの姿はありません。
え?え?
とパニックになっていると
もう一度ボンッ!と音がして
次の瞬間に
おじいさんが目の前に現れました。
「今、昨日の君を見てきたよ。駅前の自販機で緑茶を買っただろう。」
そのときはあまりの驚きで
反応ができなかったのですが
確かに昨日は駅前でお茶を買いました。
おじいさんの言ってることは
合っています。
「ど、どうやったんですか?」
戸惑いながらも聞いてみました。
「これは正確には自分の霊体を過去に飛ばすことができる壺なんだよ。」
そして、おじいさんはこう続けた
「ただ、短時間にやり過ぎると霊体が離れてしまって元の体に戻れなくなるから注意が必要だよ。そうなると君の体は永遠に壺の中を彷徨うことなる。」
僕は怖くてその“時かけ壺”を
使うことができませんでした。
おじいさんはその後
用事があるからと言い
僕に店を出るように促してきました。
色々聞きたいことは山ほどありましたが
奇妙なお店との出会いはこうして
幕を閉じました。
あれから数年、
当時そのお店があった県に
行く機会があったので
立ち寄ってみましたが
空き地になっていました。
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